ここ一月ぐらいずっとサイモン&ガーファンクルを聴いている。子供の頃にバカみたいに聴いてたから今聴いたところで何ということもないと思ってたけど、「America」の良さにやっと気がついた。曲の方はまあ、ポール・サイモンならこれぐらいは書いてしまえるだろうし、もっといい作品がたくさんある。そういう曲ばかりずっと聴いていた。この曲は、短編小説風でどちらかといえばらしくないと思うけど、とにかく歌詞がいいんだ。ポール・サイモンの歌詞は確かに深いんだけど、どういう深さかと言うとこちらできちんと意味を取れる深さ。語っていることが明瞭で、これは深いなってすんなり把握できる。だから日本語訳の苦労も少ないと思うし、事実この曲には優れた訳がたくさんネット上にあるので別に訳さない。ただ、一つだけ疑問が。

"Let us be lovers we'll marry our fortunes together"
"I've got some real estate here in my bag"

Simon & Garfunkel 「America」

この歌はこうして始まるわけだけど、この部分の訳。訳というか、この二文をどう考えるかということ。正味な話、歌詞カードは実家にあるので、この引用が正確なのか分からない。つまり、この二つが一続きのセリフなのか、別のセリフなのか。一続きのものとして訳しているのをちらほら見かけるが、海外のサイトを少し見て回ってみても、どうもこの二つは別のセリフらしい。恋人とアメリカを探しに行くというのがこの歌の一応の主旨なわけで、ここは二人の掛け合いだろう。主人公はfortunesを「将来」みたいな意味で用いているが、彼女、キャシーの方はこれをわざと「財産」と受け止めてreal estateなんて言葉を返す。要はいちゃついてるんじゃないかなあ。その方が、旅するに従ってどんどん淡泊になっていく二人の関係、という重要な構造にも貢献するわけだし。だから最初のfortunesをそのまんま「財産」にしちゃうとその辺の味が失われるんじゃないかと。でもこれそうやって日本語に訳そうとすると何とも意味不明になっちゃうな。もちろん、これは僕の勝手な解釈に過ぎないわけだけども。というかこれ本当は一続きのセリフで正解なのかもしれないし。それだったらfortunesはすっきり「財産」でI've got some real estate here in my bagの意味するところは、僕の財産なんてもうカバン一つっきりなんだけどね、ってことかな。貧しいんだ。「不動産」っていう点を突き詰めるなら、住んでたところを引き渡してもう旅に出るしかないって状態なのを主張したいのかもしれない。
もう一つ見つけた曲は「A Simple Desultory Philippic (Or How I Was Robert McNamara'd Into Submission)」。当時色んな人が作ったディラン風ソングの一つだったんだなこれは。歌い方がそっくりで笑える。名詞の後ろに「ed」で「かぶれる」みたいな意味になるのを初めて知った。