十歳の頃の自分は高校に行く気なんて更々なかった。別に学校が嫌いだったわけじゃない。どちらかと言えば、自分は学校が好きな人間だと思う。そのことはずっと変わらない、今でも。ただ、義務教育が済んで尚、学校に行きたいとは思わなかった。そんなに学ぶことがあるとは思えなかったし、早く仕事をして独り立ちしたかった。だけど十歳の時に何やかんやとあって、結局、中高校一貫の学校へ行き、するすると大学に居座っている。その過程で学んだことは少なくないが、学ぶべきことだったかというとあまり自信がない。今でも大学にいてそんなに学ぶことがあるとは思えないし、早く仕事をして独り立ちしたい。二十歳になった。十代の間にやったこと、つまりアニメを見ること、映画を見ること、美術を見ること、漫画を読むこと、小説を読むこと、音楽を聴くこと、ネットを使うこと。どれも十歳になるまではまるでやらなかったことばかりだ。一方でそれまで続けていたことは止めてしまった。意図した部分もあれば、そうでない部分もある。十歳の頃の知り合いにもし今会ったとして、自分のことをどう思うだろ。まだ自分だろうか。自分自身としては、どれからも影響されたところはあるにせよ、根幹は変わっていないという気でいる。どこまで行っても自分は確かに自分だった。信仰に値するものも、軽蔑にしか値しないものもなかった。そうして二十歳になった。また十年後、三十歳になったらどうだろう。もし三十歳になったとして、二十歳の頃の知り合いにもし会ったとして、どう思われる自分になっているだろう。十年前とは色々と事情は違ってしまっている。永遠に生きるどころか、明日死ぬかも分からない。そう考えながら十年、なんだかんだで生きているし、それでもやっぱり死ぬかもしれない。だけど確かなことが二つだけある。これからどれだけ生きるにせよ、何歳になるにせよ、今この瞬間よりも若い時代というのは決して存在しないということだ。そして自分はもう二十歳で、永遠に十代にはならないということ。それだけ覚えておけば、きっと悪いことにはならないと思う。子供の頃、やがて自分が大人になることを知っていた。大人になっても、いつか自分が子供だったことを忘れずにいたい。