僕は一人の女と再会した。彼女は言った。「まあ! 見違えるようだわ!」実際、僕は見違えていた。とりあえず髪を切ったばかりだったし、なんといっても十年近くが経過していたため、他にも色々と、とにかく、髪を切ったばかりだった。ピンクのシャツを着る勇気はまだない。僕はグリーンのパーカーを羽織っていた。だから、彼女は本当はこう言ったのかもしれない。「まあ! ヒキガエルのようだわ!」しかし、たとえ僕が一匹のヒキガエルに変身していたとしても、彼女は同じことを言っただろう。「まあ! 見違えるようだわ!」なんといっても、十年近くが経過していたのだし、僕と彼女とは別れていたのだから。
目覚めた。いつの間にやら眠っていたらしい。友達はPS3と格闘していた。
どうも腹を壊したらしい。外食をするといつもこうだ。トイレで唸りながら、自分には萌えが分からないなどと悩む。
ひとしきりPS3で遊ぶ。
帰ろうと駐輪場へ行くと、自転車が倒れている。これはパンクだ。空気入れを借りて、とりあえず注入。
深々と更けゆく真夜中、自転車を押して家まで歩く。自転車では近いが、歩くには遠い。歩くには遠いが、歩くしかない。何も考えないようにする。何も考えなければ、大抵のことは容易い。
何にせよ家についた。いつも何も考えていない。だから色んなことができない。
『日本語を反省してみませんか』を読み始める。
加藤登紀子の『赤い靴 すばらしき詩人たち』を聴く。読む。
ヴァージニア・アストレイの『サム・スモール・ホープ』を聴く。読む。
ビッグ・カントリーの『ホワイ・ザ・ロング・フェイス』を聴く。読む。
朝がくる。眠る。
僕と彼女は、二人で夜を楽しんだ。これは比喩表現である。具体的にはこうした。
僕はビルの彼方を指差して、「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」と言った。彼女はビルの彼方を眺めて、「暗くてよく分からないわ」と言った。
僕は紐を引っ張り、日を点けた。どうだ明るくなったろう?
明るくなった。カーテン越しにも日光はさして、目が覚めた。一日が始まる。
明る過ぎて見えないものもある。見えなくても、ちゃんとある。
昼がくる。ヨーグルトとミートスパゲティを食べる。
『水戸以外全部沈没』が届いたので読む。スパイシー大作戦の同人誌は単に漫画が描いてあるだけでなく、色々と詰まっていて、本として読んだり触ったりするのが楽しい。
上京して最初に気が付いたことの一つは、一限の教室が大変に納豆臭いことだ。そこで郷に入っては郷に従うべく、スーパーで納豆を買い、生まれて初めて口にした。俺は限界だと思った。
図書館へ行ってCDを借りる。百均で小さな木製のスプーンとフォークとを買う。スーパーで食材を買う。
帰宅すると、注文しておいた本が届く。
警察が来る。振り込み詐欺についての注意を受ける。もちろん、「ひっかからないよう気をつけろ」という意味で。
『日本語を反省してみませんか』を読み進める。
ケイト・ブッシュの『センシュアル・ワールド』を聴く。読む。
『日本語を反省してみませんか』を読み終える。そろそろもっと専門的なものが読みたくなってきた。
夜が来る。パンを食べる。
『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』を読み始める。
オジー・オズボーンの『オズモシス』を聴く。読む。
ドンナ・マッケヴィットの『トランスルーセンス〜デレク・ジャーマンの世界』を聴く。読む。
アリス・コルトレーンの『トランスリニア・ライト』を聴く。読む。
『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』を読み終える。楽しい読み物だった。
WORKING!!』を見る。イエス
「WORKING」が「WARKING」に見えてしかたない。もっと言えば「WAR KING」にも見える。ついでに言えば「あるキング」のことを「或るキング」と「歩きing」の掛詞だと勝手に想像している。こんなことを書いていたら「A Looking」なのかもしれないような気がしてこないでもなくなってきた。いやもしかしたら「あ Looking」なのかもしれない。「あ」というのは日本でよく知られた勇者の名の一つである。
一日が終わる。